最新の治療と、古来の医術

「気」という言葉があります。

「元気」「病気」「運気」「覇気がない」「悪気がない」「士気が上がる」…
ちょっと考えるだけでもたくさんの「気」がつく言葉が思いつきます。

普段何気に使っている「気」という言葉。
日常でたくさん登場するのに、「気」と言うとなんだかオカルトかおばけ的なものに感じてしまう私たち。

しかし中国医学ではオカルトでもなんでもなく、「気」は「働き」のことを指します。
つまり、可視にはできない「力」のこと。

血を動かす力、水を流す力、内臓がそこにとどまっている力。
これらは確かに存在しますが、確かに目には見えません。
そして中国医学では、患者にこの「力」があるかないかを、大変に重要視します。

「なぜ血は流れているのか」
「なぜ心臓は動いているのか」
「なぜ内臓はそこにとどまっていられるのか」
考えたことはありますか?
それらは「アタリマエ」ではなく、その人の健康状態によって大きく違い、人間なら「みんな同じ」ではないのです。

中国医学では、気が足りないこと、つまり動かす力が足りないことを「気虚(虚は足りないことを指す)」と呼び、気を補うことは大きな治療のポイントとなります。

先日、私の身内(77歳)がこんな話をしてくれました。
彼女は今月末、腹腔鏡手術により、膀胱を引き上げ子宮を取り除くそうです。
膀胱にヒモをかけて骨盤に引っかけるそうで。
理由は、膀胱が下がって頻尿になっているから。
子宮は「ついで」だそうです。
下から取ると、次に下がってきたときにはもう切り取ることができなくて困っている人がたくさん出ているので(ちょっと意味不明)、この「最新式の手術」でお腹に穴を空けて子宮を引っ張り出し取り除くんだ、と。
なんと返事をしていいかわからずにいると、
「こんな手術みんなやっていて、子宮なんてみんなない。むしろその歳でまだあるって珍しいね、と複数の人に言われた」
もっと絶句してしまいました。
「おしっこも行かなくなるし、便秘もきれいに治っちゃうって。これで便秘が治るなら最新式でお願いしようと思う」

なぜ膀胱が下がってきて頻尿になるのか。
それは、内臓をそこにとどめておく力(=気)が足りないからです。
痔にしても子宮脱にしても、さらには前置胎盤なんかも、気が足りなくて臓器が下がって起きている症状です。
切り取ったところで、気が足りなければ、また新たな臓器が下がって出てくるだけです。
体に要らない臓器なんてひとつもありません。
便秘にしても、様々な理由があるのにそれらを一つも解決しないで、子宮を取ったことによる便秘の解消なんて、本当に健康になったと言えるのでしょうか。
それを「最新式の治療」と謳われて、たくさんの人が自分の体の大事な臓器を失くし体にムダな負担をかけている。
一度失くしたものは永久に戻っては来ない、抜歯すら慎重に最小限にとどめておくべきであるのに(抜歯1本につき5年寿命を減らすと主張する医師もいるくらいです)。

「古来の医術」では、気は割と簡単に補えます。
気を補う漢方もたくさんあります。
「都合が悪くなったら取ってしまえばよい」
とは、ゆめゆめ考えません。
もちろん患者自身も医者に丸投げせず、生活を改善し、自分と向き合う必要があります。
取ってしまうよりは少し時間はかかりますが、リスクと痛みと術後の不便を考えたらずっと建設的です。

この私の身内は肩も病んでいて、痛くて腕が上がらず、「筋が断絶しているので手術しかない」と医者から言われているようですが、それは肩の使い過ぎなどではなく、様々な服薬の副作用による内臓の不具合から連続して起きている症状と思われます。(肩には小腸の経絡が通っています)
マッサージへ行っても治らないというので、肩の部分に少し経筋の施術を施したら、ずいぶん痛みが引いたようでした。
普通のマッサージは一辺倒にもみほぐしてしまうので、ひどい揉み返しや筋の断絶が起こってしまったりしますが、経筋の施術では筋肉の硬結部を緩めて患部にアプローチをしていくので、根っこから痛みが取れやすく揉み返しもありません。

(経筋とは、筋肉の道筋のことを指します。すべての経筋は内臓に連結しています。肩こりや腰痛やこむら返りなど筋肉だけが原因と思われがちな症状は通常、筋肉や骨格にのみ焦点を当てた施術をしがちですが、実は内臓からの問題であることがほとんどです。)

年を重ねると気は下がりやすくなりますが、方法や努力次第で充分に気の満ちた人生を送ることができます。
年を取れば、皆が認知症であちこち痛いのが普通で病気の自慢話に花が咲く、わけではありません。

「気を補うこと」「気を強くすること」「気を鍛えること」は、元気で楽しく人生を送るための、とても大切な要素であると言えます。

その中医的方法は、また書きたいと思います。

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